2002年 陸上自衛隊広報センター潜入記


<画像をクリックすると少し大きめの画像がご覧になれます>

 2002年4月27日、GW初日に陸上自衛隊朝霞駐屯地内にオープンした陸上自衛隊広報センターに出撃。
 陸自サイト内にある広報センターの
ページを見ると、来訪者用の乗用車の駐車場が26台分しかないため、GWは満車必至と思い、開館間もない時間に行ったにもかかわらず、既に満車。
 しかし、センター側でもそれを見越して臨時駐車場を開設しており、そちらに誘導されることに。臨時駐車場はセンター敷地外(=駐屯地内)なので、カミさんをセンター駐車場で下ろして、通行許可証をもらい警衛所をくぐって駐車場へ。

 2階建て構造のセンターに入ると、正面左側が90式戦車やAH-1Sが置かれている展示ゾーン、右側がイベントホールとなっていて、センターオープニングイベントの目玉、
ヘリコプター体験搭乗の抽選会場となっています。
 イベントホール入り口で体験搭乗の抽選券を配布していましたので、
抜かりなく2人分もらっておくことにします。

ヘリコプター体験搭乗抽選券

 展示ゾーンに入ると左手正面に装備体験コーナーがあり、防弾衣、空挺装備などが試着できます。カミさんも防弾衣を着てみましたがまるで亀の甲を背負っているようで、防弾衣というよりも救命胴衣のようであります。

転んだらガ○ラ 

 ホール中央に展示されているAH-1Sを見ながら時計回りに進んでいくと、壁沿いにオープンシアター服装体験コーナー(コスプレ+写真撮影)、大人気と噂のAH-1Sのフライトシミュレータが並んでいます。既に10人くらい並んでいたため、今回は搭乗を諦めることにします。しかし、このフライトシミュレータ、どうみてもテーマパークの2人乗りのライドにしか見えません。
 フライトシミュレータを通り過ぎた一角に陸自の誇る
90式戦車がデンと居座っています。脇には戦車砲弾のカットモデルも展示されています。ちなみにウチにあるスチームクリーナー(通販番組でよく見るハンディタイプではなく、見かけは普通の掃除機と同じでヘッドとボディに分かれている)の給水ボトルと展示されている戦車砲弾(APDS…装弾筒付徹甲弾)はそっくりです。
 90式戦車の隣には、
射撃シミュレータがありますが、画面の前にジョイスティックがあるだけで、思いっきりパソコンゲームと同じでチープな感じは否めません。

AH-1S前でご満悦(?) スチームクリーナーの給水ボトル 嗚呼、堂々の90式

 射撃シミュレータを過ぎると中庭への出口がありますので、出てみることにします。
 中庭には、陸自の装甲車両が整然と並べられています。建物側から最新鋭の
軽装甲車(試作モデル)、74式105mm自走りゅう弾砲96式装輪装甲車89式装甲戦闘車87式自走高射機関砲、最後に珍品94式水際(すいさい)地雷敷設装置(水陸両用車)が展示されています。

軽装甲車(試作) 74式105mm自走りゅう弾砲 96式装輪装甲車(クーガー) 89式装甲戦闘車(ライトタイガー) 87式自走高射機関砲&94式水際地雷敷設装置

 さて、オープニングイベント(GWイベント)の戦車体験試乗に向かうべく、中庭と駐屯地の出入り口(おそらく普段は閉じている)脇に設けられた受付で、整理券を貰いマイクロバスにてイベント会場へ移動。
 駐屯地を分断する一般道(県道108号線)の下に設けられたトンネルをくぐり、演習場に出ます。演習場内では休日にもかかわらず通常の訓練が行われています。
 ところでこの一般道の下に設けられたトンネル、以前は演習場に行くのに一般道を横断していたのですが、
「自衛官が戦闘服姿で小銃担いで駐屯地外にうろつくのは周辺住民に不安を与えるのでけしからん」とまるで檻から脱走した猛獣のような扱いをされ、仕方なく移動用のトンネルを掘ったという経緯があります。お国を守る仕事をなんだと思っているのでしょう。それに周辺住民のほとんどは自衛官の家族なのでは...
 駐屯地を分断している県道108号線沿いには、かつて自衛官が行き来していたゲートが今も残っています。

 イベント会場のバス停で下車、ほとんどの人が真っ直ぐ戦車体験試乗に向かいます。
 今まで空自の航空祭は何度も行っているものの、陸自のこうしたイベントは昨年の練馬駐屯地以来2回目なので「試乗」イベントがどのようなものか想像もつきません。練馬駐屯地でやっていた82式通信指揮車の体験試乗ではキャビン内に体験搭乗者を乗せて走り回っていたので戦車ではどうするのか、ひょっとすると砲手席とか装填手席に乗せてくれるのか?はたまた百里基地航空祭に登場するトーイングカーで引く花電車のような客車を戦車で引くのか期待と不安が入り交じります。前者だと非常に嬉しいのですが、後者だと非常に間抜けです。
 バス停から土手を越え、体験試乗が行われている演習地内の滑走路(?)に出ると、砲塔後部、エンジングリル上に手すりを付けた
お立ち台をとりつけた2両の74式戦車が交代で試乗希望者を乗せて滑走路上を行ったり来たりしています。
 早速順番待ちの列に加わることにします。試乗が近づくとプラスチック製の黄色い保安ヘルメット(商品名:かるメット(笑))を渡され、それをしっかり被ってからお立ち台に架けられたラダーを登っていざ74式戦車へ。
 74式戦車は車長、操縦手、砲手、装填手の4人乗りですが、この場合最低限必要な車長と操縦手だけが乗り込んでいます。
 初めて乗る74式戦車は、スタートや加速時は前後に激しくピッチングしながら走るし、全速(40km/hくらい)で走っている時も舗装路上であるにもかかわらず手すりに掴まるか寄りかかっていないと立っていられないような振動があります。
 極めつけはUターン(信地旋回)時で、左右の履帯が動く度に段階的にグッ、グッと横にGがかかってきます。これが噂に聞く幻の多角形コーナーリングかも知れません(笑)
 真っ平らな舗装路を走るだけでもこれだけ揺れているのですから、戦車本来の不整地走行時の乗り心地は想像を絶するものがあります。
 しかし、マニア心理というのは勝手なもので、どうせなら滑走路脇にある坂路(未舗装路)を走ってくれればいいのにと思ったり...(^^;

イベント用特別仕様車 気分はエーベルバッハ少佐(笑)

 74式戦車の試乗を終えたところで、装備品展示エリアに行ってみることにします。
 野外手術セット、救命体験コーナー、健康相談コーナー、82式通信指揮車、87式偵察警戒車、93式近距離地対空誘導弾、74式戦車、高機動車、野外入浴セットなどが展示されています。

82式通信指揮車(コマンダー)&87式偵察警戒車(ブラックアイ) 木陰から射撃せんとする74式戦車(ナナヨン)...ではない

 野外手術セット、救命体験コーナー、健康相談コーナー、野外入浴セットにはほとんど人がおらず説明に張り付いている隊員も手持ちぶさたのようであります。
 とりあえず野外入浴セット(制式名称は「野外入浴セット2型」)の天幕内に入って入浴の真似事などして遊んでみたところ、隊員にウケてしまいました(単に笑われただけ?)。

さて、ひと風呂浴びて帰ろうか

 野外入浴セットの隣に89式小銃が展示されていたのでちょっと構えてみたりします。良く見ると右側に付いている安全装置兼発射セレクターレバーの反対側にも同じようなレバー取り付け穴のようなものがあったので、「左利き用にレバーが付け替えられるんですか?」と側にいた隊員の方に聞いてみたところ、分からないという回答が...(^^;
 う〜む、それでは89式小銃の愛称
BUDDY−相棒−が泣くぞ。まー左利きでも無ければ素人は気づかないかも知れないが、執銃作業で教えないのはまずいんでないか(^^;

グアムの射撃レンジではない(笑)

 野外手術セット、救命体験コーナー、健康相談コーナーに見学者がいなかったのと対照的に装甲車両群には黒山の人だかりであります。ただし、82式通信指揮車、87式偵察警戒車にはいかにもミリヲタという感じの人たちが隊員と話し込んでいたのに対し、74式戦車は子供がわらわらと群がっていたため写真を撮るのも一苦労であります。

判りにくいがガキんちょに混じって車長席に納まりご機嫌

 広報センターとの往復バスが走る道路を挟んで反対側の駐機場には、UH-60JA、UH-1、AH-1S、OH-6Dといった陸自ヘリコプター群が展示されています。おそらくUH-1は体験搭乗に使用されるものと思われます。驚くべき事に私は1枚も写真を撮っていません(^^;
 ちなみにイベント会場でもらったイベント会場案内図の航空機展示エリアにはUH-1のシルエットと並んで次期攻撃ヘリコプターとして導入が決定したAH-64アパッチのシルエットが描かれているのですが...ひょっとしたら
技本で極秘裏に改造されたビジュアル・ステルス仕様のAH-64が展示されていたのかもしれませんが(笑)

疑惑の機体

 戦車に乗って、のんびり風呂に入って埃落としをしている(笑)うちに、ヘリコプター体験搭乗の抽選結果発表の1140時が迫ってきたのですが、センター行きバス停には長蛇の列ができており、とても時間までに戻れそうにありません。ついでに言えば、センター・イベント会場間を徒歩で移動することは禁止されています。ですので残念ではありますが今回、ヘリの体験搭乗は諦めることにします(時間までに戻っても抽選に当たっているとは限らない)←これを負け惜しみと言う(^^;

 とは言いつつも、1日センターで遊んでいる訳にもいかないので、イベント会場バス停へ。センターとイベント会場は2台のマイクロバスでピストン輸送をしているのですが、お昼前のラッシュ時ということもあってか、バス停にはおそらく100人に近い見学者が帰りのバスを待っており、マイクロバス2台ではなかなか捌ききれず列は長くなる一方。そこで陸自(センター)サイドは自慢の大量輸送兵器
73式大型トラック1台の緊急投入を決定。ちなみにこの73式大型トラック、ワイパーがフロントウィンドー上に付いていることから1987年以前に導入された旧型であります。15年以上前の車両を未だに良好なコンディションで使用している自衛隊には頭が下がる思いであります。
 見学客の多くが喜んだのは言うまでもないのですが(笑)、マイクロバス2台に対して73式トラックは1台ですので、73式トラックに乗れる確率はほぼ1/3。バス停で待っている見学者の中には自分がどちらに乗ることになるのか並んでいる人数を数え出す人も...かくいう自分もそうでしたが(笑)
 73式トラックが出発した後、マイクロバスが2台やってきて、人数的にはちょうど自分たちの順番で73式トラックに乗れると喜んでいたところ、バス待ちの見学者の列が短くなったため、73式トラックの投入は先ほどの1回だけで終わりそうな雰囲気に...

乗れるかどうかハラハラドキドキ

 戻ってきた73式トラックにバス停で見学者の整理・誘導をしている係員が近づいていきます。見学者の多くが不穏な期待と不安が入り交じった目つきで73式トラックを運転してきた隊員と係員を見ていると、見学者の不穏な雰囲気(笑)を察したのか、係員が一言「じゃあもう1回お願いします」(^^)v
 乗れることになった見学者から歓声が上がり、喜々として73式トラックに乗り込んでいきます。マイクロバスより乗り心地が悪いトラックに乗ることになって喜ぶ人は稀かと思われますが...ここには
沢山いるようです(^^;

外は見えなくともご機嫌

 定員になったところで、荷台のゲートが閉じられセンターに向けて出発。荷台には幌がかけられており、明かり採り程度のビニールの小窓はあるものの、擦り傷だらけでほとんど外は見えないし、木製のベンチシート、サスペンションも硬く、乗り心地は決して良くないのですが、みんな嬉しそうに乗っています。考えようによっては、戦車の体験試乗よりこっちの方が貴重かも知れません。
 自分たちはイベント会場からセンターまでのほんの数分間乗っていただけですが、隊員の皆様方は駐屯地外の演習場に行くときなど何時間もこの固いシートとサスペンションに耐えて移動しているのです(幹部は俗に言うジープやミリタリー・パジェロで移動?)。
 一般道はもとより、恐ろしいことに
高速道路でも見たこともあります。もちろん荷台にはエアコンなどという快適装備はありません。何せ人は貨物扱いですから...(特例扱いなので、一般人がトラックの荷台に人を乗せて走ると道交法違反になる)
 それどころか運転席(キャビン)にもエアコンは付いていません。ヒーターは付いていますが、夏はキャビン前面に設けられた蓋を開けて走行風を取り入れながら走るしかありません。それとてキャビンだけです。
 そんな隊員の皆様方の苦労に思いをはせているうちにセンターに到着、受付で整理券を返して(これでイベント入場者を管理をしている)センター内に戻ることにします。

 センター内に戻り、2階の展示ゾーンへ行ってみることにします。
 たかだか2階に上がるのにエントランスホールにあるエレベータに乗ってみたりしましたが、順路的にはエレベータで上がるのが推奨コースになっています。
 現用兵器装備が所狭しと展示されている1階と違い、2階は陸自の任務・組織、あゆみ・遺産など非常に地味目な展示内容となっています。研修室では各種書籍(私が毎月買っているような本もある)、ビデオ等が閲覧可能になっています。
 1階を取り囲むように設けられているギャラリー(海軍風に言えばキャットウォーク?)を歩いてフライトシミュレータの脇にあるエレベータにて1階に下りることにします。階段もあるのですが、せっかく外が見えるエレベータですので乗らない手はありません(貧乏人根性)。
 中庭出口脇に展示されていた南極の氷(砕氷艦「しらせ」はれっきとした海上自衛隊艦船)を見てから地下指揮所を見学。

エレベータ内から見た館内 地下指揮所

 エントランスホールに戻ってみると、イベントホールではヘリコプター体験搭乗当選者の搭乗手続きの説明が行われています。結構いろいろと事前に書類を書く必要があるようです。

 ホール入口にある”SAKURA”という
如何にも陸自なネーミングの売店でしばしお土産など物色、「陸上自衛隊」と名前が入ったチョコレートを買って帰ることにします。もっともチョコ、誰でも一度は見たことがあるメリーチョコレートカンパニー(”Mary’s”)の製品で、商品名も「ESPRIT DE MARY」と陸上自衛隊の”陸”の字すら入っていませんが...
 この売店、もう少し大きく、去年行った練馬駐屯地のPX程度の品揃えがあれば言うこと無いんですけど(JRで言えばキオスクではなくコンビニのNEWDAYS)。
 最後にセンター入り口にある来館記念スタンプをパンフレットに押してセンターを出ます。

チョコ自体は「Mary’s」 来館記念スタンプ

 センターを出て、カミさんと駐屯地内の臨時駐車場まで行くことにしましたが、警衛所では私が貰った許可証を見せたところ、特に誰何されることもなく、2人一緒に臨時駐車場へ。来たときは駐車場の係員に「運転者だけ臨時駐車場に行ってください」言われたんですけど...
 車に戻った頃、演習場の方からヘリの爆音が響いてきました。体験搭乗のファーストフライトが始まったのでしょう。ひょっとしたら自分も乗っていたかも知れません←と未練がましくまだ言っている。

 この日は他の場所に行く予定もあったので、駆け足ではありますが、以上で陸自広報センター訪問は終了。


潜入記後書き

 さて、これのどこが潜入記なのでしょう?こういうページを公開すると世間からは、見かけ倒しとか、看板に偽りありとか、企画倒れとか、誇大広告とか、JAROって何ジャロとか、羊頭狗肉とか竜頭蛇尾とか言われるのであります。決して羊の皮をかぶった狼とは言われない。

 戦車やヘリコプターの体験搭乗は別としても、各種シミュレータや3Dシアターなど、通常期に行っても半日は楽しめる施設であります。
 世間では有事法制に関する議論が盛んに交わされている中、このような施設で自衛隊あるいは国防の必要性を十分に広報すべきかと思いますが、ざっと見学した印象としては、PRセンターというより、単に陸自の最新装備のショールームという感じだったのが残念です。
 例えば、空自入間基地内にある修武台記念館のように陸自の歴史をもう少し深く掘り下げるなどの工夫があってもいいと思います。(帝国陸軍時代の話しは触れてはイケナイのか?)


1.特別イベント

 GWに訪れた広報センターの記事をアップするのが夏休みになってからという体たらくですが、夏休み期間中も「夏休みフェア」として7月20日、21日に装備品展示、装備品への体験試乗や27日にはヘリコプター体験搭乗が開催されたようです。
 今後も連休期間等に特別イベントが開催される可能性もあります。

2.広報センターの住所

 広報センターは朝霞駐屯地内にあるのですが、パンフレットに記載されている住所は「東京都練馬区大泉学園町」です。
 
愛用の自衛隊手帳を開いてみると、そもそも朝霞駐屯地自体の住所も大泉学園となっているので、地図を開いてみたところ、朝霞駐屯地は朝霞市、和光市、新座市、そして練馬区大泉学園町にまたがる一大(?)駐屯地となっています。
 公的な住所として練馬区を使っている以上、さぞかし練馬区の面積もあるかと思いきや、練馬区の飛び地のようなところが僅かに駐屯地に食い込んでいるだけで、主要庁舎(隊舎)のほとんどは朝霞市内に設置されています。確認はしていませんが練馬区内には建物がほとんど無いと思われます。
 これって、練馬区にあるのに「豊島園」とか、市町村境上に建てられたマンションやアパートが入り口部分の住所を建物全体の住所としてしまう(この場合、入り口部分の住所の方がメジャーである)のと同じで、不要の誤解を招くことになるのではなかろうか。
 そこまで練馬区に固執するのであれば、いっそのこと駐屯地名も「練馬第二駐屯地」とするとか、合併した銀行のように「練馬朝霞新座駐屯地」にした方がいいのでは(笑)
 おまけに、代表電話番号は「048(460)1711」と埼玉県の電話番号となっているのに、ダイヤルインは「03(3924)4176」と練馬区の電話番号となっているので、電話をかける場所によっては代表電話とダイヤルインで電話料金が違うことになります。


レポート一覧に戻る

inserted by FC2 system