中東某国で目撃されたF-20に関する考察

 

 公式には3機しか生産されておらず、うち2機を事故で損失したF-20であるが、内戦が続く中東のアスラン王国で、尾翼にユニコーンを描いたアスラン空軍のF-20がしばしば目撃されている。
 アスラン情勢に詳しい軍事評論家S氏によれば、このF-20はアスラン空軍のエリア88基地に展開する外人傭兵部隊で使用されていたとのことである。

 F-20の1、2号機は墜落事故により損失、残る3号機はロサンジェルスの工業博物館に展示されていること、さらに中東でF-20が目撃されている時期にこれら1〜3号機が揃って映っている映像記録等が多数存在することから、アスラン王国で目撃された機体はこれら1〜3号機ではないということになる。
 特に1、2号機は韓国、カナダでのデモフライト中に墜落しており、事故を偽装して機体を隠匿、アスラン空軍に供与することは不可能である。

 この謎のF-20については、以下の3説が存在する。

  (1)4機製造説

 1、2号機の損失により、ノースロップ社では4号機の生産を開始したものの、F-20計画自体の中止により、未完の4号機はスクラップ処分されたこととなっているが、実は既に4号機まで生産されており、うち1機がアスラン空軍に引き渡されていたとする説。
 後述する武器商人マッコイ某がノ社と何らかの条件、おそらく実戦データの提供あるいはノ社幹部のスキャンダルをネタにF-20の供与を取り付けたものと思われる。
 ただし、F-20がF-5Gと呼ばれていた頃からアスラン王国で目撃されてることから、アスラン空軍に供与されたのは4号機ではなく、1号機若しくは2号機、おそらく1号機である可能性が高い。
 完成直後の1号機が極秘裏にアスラン空軍に引き渡され、残る2号機以降を1〜3号機として各種テスト、デモンストレーションに使用、さらにアスラン内戦の最終段階において発生した戦闘で大破した機体をマッコイ某を通じてノ社が回収し、ダミーで立ち上げた4号機生産計画の中止に合わせてスクラップとして処分してしまったとして、公式発表とほぼ辻褄が合うことから信憑性が高い。

  (2)F-5E改造説

  軍では同種の兵器であれば、調達、運用、補給、教育そして費用の点から1〜3種程度に統一して運用するのが通例であり、アスラン空軍においても、一部例外(エリア88及びF-15部隊)を除き、戦闘機は基本的にF-5EタイガーII、クフィルの2機種である。
 しかし、多種多様の航空機の整備を一手に担っているエリア88整備部隊では「燃料ポンプは口金さえ合えばメーカー不問」「A-10攻撃機の30mmガトリング砲を40mmガトリング砲に換装」「ミラージュの部品をクフィル用に加工」も日常茶飯事でこなしていたと噂される程、整備・維持能力が高かったため、マッコイ某が入手したF404エンジン(あるいは同等の高性能エンジン)をアスラン空軍正規軍、エリア88でも多数が運用されているF-5Eを大改造してF-20もどき(以下「F-5E改」)を作り上げたとする説。
 そもそもF-20自体が「F-5Eの単発機化、高性能化」であり、実際1号機はキャノピー、レーダー等F-5Eの部品を多数流用して生産されたり、F-5E用の組み立て治具がF-20でも使用されていることから、あながちあり得ない話しではない。
 その上、このF-5E改が使用されるアスラン内戦の航空戦は、短射程ミサイルと機関砲による有視界近接戦闘が主体であったことから、レーダー等FCSがF-5Eと同じであっても問題が無かったものと考えられる。
 反政府軍のミグ21、政府軍のF-5E、クフィルもスパローなどの中射程レーダーホーミングミサイルを搭載できず、エリア88で使用されたF-14Aも後席(レーダー手席)をつぶしてレーダーホーミングミサイルを使えない単座機として使われていたほどである(これをタカラの持ち腐れという)。
 しかし、この後、エリア88は相次ぐ基地移転、滞りがちな補給と、保有作戦機の維持・運用だけで手一杯となってしまったことから、製作されたF-5E改はこの1機のみとしている。

  (3)モックアップ改造説

 上記F-5E改造説の亜種とも言える説。
 いかに整備維持能力に長けたアスラン空軍と言えども、装備の追加や小改造はともかくF-5E改のように胴体後部の再設計まで行えるような能力までは無いと見るのが妥当である。
 そこで、マッコイ某がノ社からF-5Gのモックアップ(実物大模型)を入手し、これにF-5Eの中身と新エンジンを詰め込んだ機体であるとする説。
 しかし、コクピット、エンジン、補機類、各部パネルのレイアウトが設計図と同様に作られているとは言え、素材、強度の点からモックアップをそのまま使用するには無理があることから、F-5E改同様、胴体前部及び主翼、水平尾翼はF-5Eから流用、主翼前部のストレーキ、胴体後部と垂直尾翼をモックアップから採寸して新規に製造されたものと考えられる。
 いわばF-20の劣化コピー版であるが、単発化に係るエアインテークや胴体後部の設計、デザイン等高度な技術力が必要とされる部分に関する問題がある程度クリアされ、おそらく同時にノ社から設計図も入手していたと考えられることから単なるF-5E改説より説得力がある。

  【謎の武器商人】

 このF-20に深く関わっているのが、「金さえ出せばクレムリンですらひっぱってくる」と噂される武器商人のマッコイ某率いるマッコイ商会である。
 アスラン王国政府、軍部に深く食い込んでおり、特にエリア88の補給を一手に引き受け、多種多様の戦闘機、攻撃機を運用するエリア88には無くてはならない人物である。
 取り扱うのは軍用機(後には原子力空母まで)からカメラのフィルム、イチゴジャムに至る日用品まで様々であり、殊に軍用機は中古のF-5、F-4、A-4などの他に、収集した各国政府高官のスキャンダルをネタにA-10攻撃機、F/A-18戦闘攻撃機のスペアエンジン、果てはX-29実験機までといった最新鋭機や機材をエリア88に納入している。
 また、各国からかき集めたスクラップからサーブ・ドラケンを製造して納入した実績もあることから、上記仮説のF-5E改あるいはモックアップ改造F-20についても、アスラン空軍ではなく、マッコイ商会がノ社若しくは航空機製造能力を有する第三のメーカーに作らせた可能性も否定できない。

  【F-20のパイロットは日本人?】

 このF-20のパイロットについては、日本人であるとの噂があり、外務省、内閣調査室、加えて防衛庁(自衛隊)が調査した結果、退官した自衛官パイロットに該当者は無く、日系二世の外国人等の誤認ではないかとのことである。
 空自内では「ファントム無頼コンビ」と称されたファントムライダーの神田某、栗原某の2名について、その行動記録が月イチでしか残されていないことから特にアメリカ研修(出張)時の記録について入念な調査が行われたとのことである。
 他説として一介のラインパイロットから大和航空社長にまでなった神崎某なる人物がその後行方不明となっており、この神崎某がF-20のパイロットではないかと推測する者もいる。しかし、神崎某が大和航空にいた頃から既にF-20が目撃されていることから、神崎某ではなく、神崎某の孤児院からの友人でパイロット研修生時代にパリで行方不明になった風間某こそがこのF-20のパイロットであるとする説も根強く残っている。
 ※風間某説に関しては、有力な証人と噂される大和航空元社長及びその令嬢親子、さらに周辺関係者が固く口を閉ざしていることが逆に信憑性を高めている。

 

 いずれにせよ、アスラン内戦の終結とともに機密書類、特に外人部隊に関する書類が完全に処分されていること及びエリア88所属パイロットは1名を除き全員戦死したと伝えられることから、真相は謎のままである。

 

(ネタ了)

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