原題「タイフーンじゃだめなんですか?」


 2012年末の衆議院議員選、翌13年夏の参議院選で圧勝し政権基盤を確固たるものにした自民党は、南方海域の領海・領空防衛強化を決定、これに伴い海上保安庁、自衛隊の装備、人員の増強に乗り出した。

 航空自衛隊の増強策の一つとして戦闘機部隊の1個飛行隊増設があり、F-35の追加で賄う予定であったが、想定を上回るF-4の老朽化の進行、F-35の配備の遅れが確定的となり、このままでは増強の前に一時的に防空能力が著しく低下する事態となったことから、政府は2個のF-4飛行隊(301SQ、302SQ)のうち1個飛行隊をF-15飛行隊に改編(現在のF-15各飛行隊の配備数を一時的に減らすことにより抽出した数機と飛行教導隊全機を充てる)、もう1個飛行隊をFX選定においてF-35と最後まで競ったユーロファイター・タイフーンの最新型「トランシェ3」を18機導入し、タイフーン飛行隊とすることを決定。
 ※教育飛行隊(23SQ)のF-15は、東日本大震災による訓練用F-2B減耗の影響もあり、実戦部隊転換は見送られた。

 加えて飛行教導隊機のF-15が実戦部隊に転用された穴埋めとして飛行教導隊用に8機のタイフーンを導入することとしたため、合計26機のタイフーンを導入することになった。なお、単座型と複座型は各々14機(全て実戦部隊)、12機(実戦部隊4機、飛行教導隊8機)となっている。
 飛行教導隊へのタイフーン配備については、空幕内部の「周辺国で第4.5世代以降の戦闘機の配備が進む中、F-15同士による同機種間空戦訓練より、F-15、F-35と同等以上の戦闘機によるDACT(異機種間空戦訓練)を実施する必要性がある」との主張が通ったためと言われている。

 飛行教導隊にタイフーンが配備されるため、飛行教導隊と同じ新田原基地に配備されている301SQがタイフーン飛行隊となり、302SQ(百里基地)がF-15飛行隊となった。
 なお、F-35配備時は、302SQと増設飛行隊をF-35飛行隊に改編、新編し、302SQのF-15は飛行教導隊分も含め、他のF-15飛行隊の定数回復及び増強に充てることになった。

 タイフーンの制式名称については、@制式番号を付与せずに「タイフーン」とする、A「EF-2000」から「F-2000」とする、BF-2の次ということで「F-3」とする、の3案があったが、@は空自の制式名称命名基準から外れ「前例が無い」ため不採用、Aは前例はあるものの、海外セールスを担当するBAEシステムズにおいてEF-200の名称が使用されていないため不採用、「F-3は次期国産戦闘機に付与すべき」との声も根強かったものの、半ば消去法的にBの「F-3」が採用となった。なお、単座型、複座型は輸入機の例に倣いそれぞれ「J」、「DJ」と呼称することも併せて決定された。

 配備が急がれたため、FX選定時にあった国内ライセンス生産案は採用されず、全機完成機で輸入の上、順次AAM3等の国産兵器を装備するための最低限の改修及び整備のみ国内メーカーが実施することとし、改修が行われるまでの間はAIM-9及びAMRAAM(輸入)により対応することになった。
 2014年に第一次発注分として、転換訓練及び飛行教導隊の早期稼働のため、複座型12機がBAEシステムズに対して一括発注され、BAEシステムズは英空軍及びタイフーン生産メーカー、導入国と調整の上、空自向け複座型12機を集中生産し年内に全機が空自に納入された。
 なお、FX選定時に問題となったタイフーンの空中給油方式(プローブ&ドローグ方式)については、既にUH-60JAヘリへの空中給油機としてC-130Hにドローグを付加したKC-130Hがあったため、問題とはならなかった(穿った見方をすれば、FX選定時においても空中給油方式の違いは決定的な問題にはならなかったと言える)。

 F-3タイフーンの機体番号については、防衛省及び空自は、単座型「J」は601番から、複座型「DJ」は671番からという決定を行う。
 単座型の「601〜」は、これまでの主力戦闘機(F-104、F-15、F-2は単座型)が百番台の最初から始まること、「501」から始まるF-2の次ということで違和感は無いが、複座型の「671〜」については、「051」から始まるF-15DJの例があるものの、「671」という中途半端な番号から始まる点に違和感がある。かつ、F-15の場合、単座型は800番〜、複座型は051番〜と百番台の数字も違っているのに対して、同じ600番台を使い分けることも前例が無い。この点について、防衛省及び航空自衛隊は、「配備機が少ないため、同じ600番台とした」としか説明していないが、複座型に「680」が含まれることになるため、防衛省及び空自は「わかってやっている」と言われている。

 第一次分で入されたF-3DJのうち、671号機と672号機は各種テスト実施のため、飛行開発実験団に配備され、残る673号機以降は全機が一時的に301SQに配備された。
 この時点で680号機の塗装は大方のマニアの期待を裏切り、他のタイフーンと同じ塗装であった。

 タイフーンの導入に際して、「射程が短いBK27は空対空射撃に不適であり、補給の面からも20ミリバルカン砲が望ましい」との声があったため、航空実験団において試験的に1機にM61機関砲(バルカン砲)に換装することとなり、改造対象とされたのが680号機であった。
 バルカン砲はF-22に装備されているM61A2と箱形弾倉を小改造することで、タイフーンのBK27機関砲の収納スペースにほぼ収まったが、単砲身のBK27に対し、6砲身のバルカン砲を収納するため主翼上面にバルジが設けられた。
 砲弾(銃弾)が27ミリから20ミリになったことに伴い、携行弾数がBK27の150発から250発に増えたものの、それでもF-15の1/4弱、F-2やF-22の半分であり、バルカン砲特有の問題から「最高発射速度に達する前に残弾が半分になる」と言われ、換装されたのは結局680号機1機にとどまった。
 巷では「そんな事は最初から解っていたんじゃないか?単に680号機にバルカン砲を積みたかっただけなのでは?」と噂されている。

 バルカン砲を装備した680号機は飛行開発実験団で射撃テスト等が実施された後、その年の新田原基地航空祭前日に原隊復帰となったが、翌日の航空祭に尾翼とエアインテーク側面に特別塗装が施され、ご丁寧にもキャノピーフレームに「T.KANDA」、「H.KURIHARA」と書き込まれて展示されたため、機体の前は開場早々から黒山の人だかりとなった。
 さらに午前中の飛行展示の最後に行われた301SQによるスクランブル発進デモでは、「ただ今より第301飛行隊のF−3タイフーンによる対領空侵犯措置任務の飛行展示を行います。なお、飛行展示機は地上展示中の680号機、パイロットは前席、神原二等空尉、後席、栗田二等空尉の神・栗コンビであります!」というアナウンス直後に会場内にスクランブルを知らすブザーが鳴り響くと同時に、「スクランブル!!スクランブル!!国籍不明機北上中!!防空識別圏に進入!!機種は不明なれど、高度2万4千メートルより進入降下中!!」とスピーカーから流れると、地上展示エリアに駐車していたマイクロバスから整備隊員とオレンジ色のフライトスーツに白いFHG-2ヘルメットという一世代前の装備を着けたパイロット2人(うち一人はバイザーカバーを赤く塗ったヘルメットを被り、もう一人はサングラス着用)が飛び出し、「回せ〜っ!」と叫びながら680号機に乗り込み、離陸準備が整うと、スピーカーから「こちら百里680、離陸準備完了」「了解、百里680、クリアード・フォー・テイクオフ!」というパイロットと管制塔の交信が流れるという大サービスに元ネタを知っている観客から大歓声が上がり、インターネットの巨大掲示版では「ついに空自がやってくれた!」「空自やりすぎ」とその日のうちに航空祭スレッドが10に達するお祭り騒ぎとなり、以後680号機はマニアから「680スペシャル」若しくは新田原基地にもかかわらず「百里680」と呼ばれるようになった。
 ※会場内に流れたパイロットと管制塔の交信はあらかじめ録音されたもので、実際は通常の手順に則った交信が行われていた。

 実際、空自内でタイフーン配備の際に、301SQと302SQの所属航空団を入れ替え、百里基地に301SQを移転させる案もあったが、飛行教導隊機との整備の観点から移転を断念したことが判明している。つまり空自も機体番号を含め「百里680」の実現を画策していたことになる。

 第二次分として輸入された単座型F-3Jの配備に伴い、12機の複座型DJから8機が飛行教導隊に移動することになったが、680号機は特別塗装のまま301SQ所属となり、以降の航空祭では地上展示、デモフライトに欠かせない存在となっている。
 また、百里基地航空祭(外来機)では、305SQのT-4「680号機」と並べて展示され、外来機にもかかわらず例外的に展示飛行が実施され、ブルーインパルスを凌ぐ大歓声が上がった。


 タイトルは、製作開始当初、「時のR4防衛副大臣の”タイフーンじゃだめなんですか?”の一言で導入が決定された」という設定を考えていたため。
 作っている間に政権交代しちゃったので、上記のめんどくさい無理設定を考えました(笑)

 原作の「百里680」はウィキペディアによると305SQ所属という設定らしいのですが、手元のコミック(小学館文庫版)で所属飛行隊が判別できるシーンを確認すると、(1)第1巻第5話「永遠のシュプール」で退官する島津教官を送るため、F-4数機で空中に305SQの飛行隊マーク(梅花)を描くシーンがある、(2)第3巻第5話「滅亡への秒読み」で、米原潜クラッシャーから誤発射された巡航ミサイルを発見し、原潜と交信する際に「こちらは航空自衛隊、百里基地所属教育飛行隊680号!」と言っている、(3)第7巻第6話「百里式クリスマス・プレゼント」で空母サミットに着艦し、乗艦許可申請を行う際に「航空自衛隊百里301空2尉神田鉄雄、乗艦許可願います」と言っている、(4)第7巻12話(最終話)「永遠に」で、神田、栗原の免職を取り消してもらうため、西川2尉が太田司令にパイロット全員の辞表を提出するシーンで「308及び501隊パイロット全員の辞表であります!」と言っています。
 しかし、(1)は空中に描かれたマークを見た太田司令が「206飛行隊の紋章(エンブレム)だ!」と言っています。206SQはF-104飛行隊で、連載後間もなく305SQとして206SQの飛行隊マークを引き継いでF-4飛行隊に改編されていますので、連載時点でこのマークを描いたのは301SQのF-4ということになります。(2)の「教育飛行隊」は実在しませんが、301SQはF-4のマザースコードロンなので「F-4の教育飛行隊」と言えないこともありません。また(4)の308SQは実在しません。
 よって、コミックから読み取れる限りでは、(3)の301SQが680号機というか神田、栗原両名の所属する飛行隊とするのが妥当かと思われます。
 加えて、第2巻第8話「編隊家族(フォーメーション・ファミリー)」のモノクロページ1ページ目には尾翼にケロヨンが入った301SQのF-4が描かれてます。
 そもそも連載開始当初に百里基地のF-4飛行隊は301SQしかなかったんですけどね。

 また、301SQをタイフーン飛行隊に改編した場合、上述のようにF-35の2個飛行隊をどうするのかという問題はあります。
 300番台飛行隊は301SQ〜306SQまで全て使われているので今までに無かった307SQを新設するよりも、23SQ(教育飛行部隊)創設のために解隊された202SQをタイフーン飛行隊として復活、新田原基地に配備するのが妥当でしょう。

 まぁF-35が42機(2個飛行隊分?)じゃなくて100機くらいの導入だったら、機体番号は上述のとおり、「601〜」になるはずなので問題なくF-35で「680号機」が誕生するんですけどね...

 相変わらず脳内設定(妄想とも言う)は楽しい(笑)

 それと今回、301SQと飛行教導隊にタイフーンが配備されるという設定で、コブラマークのタイフーンというのも結構いいのではないかと思うのですが、飛行教導隊機については以前から温めている計画があるので...まぁいつになるか分かりませんが。

2013.01.15加筆訂正
2013.01.18加筆   

(ネタ了)

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